12月1日

 良く晴れた日だが、地下深くにいる沢田綱吉は気づいているのかどうか。外出から帰った雲雀に、熱い茶が出される。冷えた指先を薄い陶器がここちよく焼く感覚をしばらく味わって、ず、と甘みの強い緑茶を一口すすると、雲雀は周囲に人の気配のないことを確認して、デスクの引き出しを開けた。放り込まれた書類、ファイルなどを、1枚よけ、2枚よけ、がさごそと目的のものを取り出す。

 いつでも視界に入るところに置いておいたら、何だか自分が堕落してしまうような気がする。何と言っても、沢田は雲雀を甘やかす天才なのだ。

 ぺり、と簡単に貼られたセロテープをはがして、1、と書かれた扉を開ける。クリスマスツリーの、ちょうど真ん中あたり。小さな扉の向こうは、裏側から袋が貼り付けられていて、その中に何かこまこましたものが入っている。これを、1日から30日まで、全部やったのだろうか。

「暇なの?」

 そんなわけがないと、雲雀はよく知っている。

「こんなことする時間に、少しでも寝ればいいじゃない、」

 ばかなこ、と呟いた声は雲雀自身ぎょっとするほど甘く、思わず口元に拳を当てた。