12月5日

 どんよりと重く湿った雲が空を覆っている。黒い鋳物のフェンスに軽くもたれて腕を組んでいた雲雀は、右手に持っていた紙コップを傾けた。何だか舌に絡みつくようなねっとりしたカフェラテ。一口飲んで眉を寄せ、ふ、と息をつく。単に飲み物としての味なら自分で白湯でも沸かした方がましに思えるが、酒もタバコもやらない雲雀には、短い時間で気分を変える手段は多くはない。

 忙しい、とはいえ、こうやってふらふらと街に出る時間が雲雀にはある。風紀は、雲雀が作った、雲雀のための組織だ。最終的には雲雀の意思が一番に尊重される――だが、沢田綱吉とボンゴレはそうではない。

 黒いトレンチコートのポケットには、今日のアドベントカレンダーの中身が入っている。

 オレは今日から1週間イタリア本部です
 って知らせるからには
 たまにはおみやげでも買おうかな
 空港ってどこでもマカダミアナッツのチョコ
 売ってるのはどうしてでしょうね
 ひばりさんどうしてか知ってます?

 厚い雲の向こうでは飛行機が飛んでいるのだろうか。雲雀は口に合わないコーヒーの口直しに、カレンダーに入っていた小さなマカダミアナッツチョコレートの包装を破ると、口の中に放り込んだ。