12月6日
周囲に人の気配のないことを確認して、カレンダーの6の小窓に指をかける。今日まで六日間、雲雀がカレンダーを触っているときには草壁の気配を感じられないのが、逆に、草壁には全てを見通されているようで、なんだか落ち着かない。
付き合いの長い分、草壁には色々と弱みを知られている。それをネタにしてどうこう言うような部下ではないが、ただ単に雲雀自身が、もう中学生でもあるまいに、いまだに色恋に浮き沈みするのを止められない自分を恥ずかしく思うのだ。
今日カレンダーに入れられていたのは菓子ではなかった。どこで手に入れたのだろう、フェルトでできた、作りの細かいクリスマスのブーツ。大きさは3cmほどのものなのに、かかとや靴底が作りこまれたブーツ自体の造形もさることながら、あふれそうに詰め込まれた、豆粒よりも小さなおもちゃやぬいぐるみは細部まで本物に近い。ツリーのオーナメントなのだろう、上部には細い紐が輪になってつけられている。
手紙は無しか、と思えば、ブーツに押しピンが刺してあり、小さな紙切れが留めてあった。
いま この辺にいます
三秒ほど考えて、ブーツをあの半島に見立てているのだと気づいた。
「咬み殺しがいのありそうな群れはいるかい」
呼びかけてもしんとした空気が広がるだけだ。ふ、と頬を緩めると、ピンはつけたまま、デスクの上の蓋のある文箱へ入れる。
ちょうど廊下から、この部屋へ向かって足音が近づいてくる。おそらく草壁だ。そんなわけはないと知りながら、あまりのタイミングの良さに、どこかから見ていたんではなかろうかと雲雀は眉を寄せた。
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