12月9日
ぴ、と通話終了のキーを押して、雲雀は携帯電話をスーツの内ポケットへ落とすように戻した。かさ、と紙がつぶれる音がした。内ポケットには先客がいた。8の小窓に入っていた、沢田綱吉の手紙。思ったより長くなったのか、4分の1にカットされたコピー用紙が2枚重ねられて、厚みのせいで結び文にできなかったらしく、小さく折りたたんであった。
今日で本部滞在も折り返しです
今回オレには与えられたミッションがあって
なんとしてでもクロームに会わなきゃいけません
みんなからクロームあてに誕生日プレゼント
あずかっています(もちろんオレのも!)
直接手渡せなかったなんてことになったら
ハルや京子ちゃんやビアンキにイーピンにも
なんて言われるか
オレが無事クロームと合流できるように
ひばりさんも祈っててください
女の子たちはどんどん強くなります
オレが守るなんてうぬぼれもいいところです
あなたはいい顔をしないでしょうけど
いつも、オレがプレゼントをあげると
クロームは雲の人からももらったと
同じことねって言って笑います
オレはそれを聞くのが嬉しくて
毎年否定しないのです
(いつも「ひばりさんの分」として
クロームのほっぺたにキスしています)
真っ白い大振りのマグカップから紅茶をすする。長めの手紙と一緒に入っていたティーバッグ、ハロッズの14番。高地産の茶葉を好む雲雀にはアッサムのブレンドは少し強いが、ミルクティーにするのが好きな沢田綱吉がよく飲んでいるので、舌にはなじむ。草壁の細君が雲雀の分も、と夜食に差し入れてくれた、スモークサーモンやアボカド、クリームチーズ、キュウリを使った、サンドイッチにもよく合う。
突発的なトラブルがあって、今夜はまだ書類は山積み、どうも帰れそうにはない。草壁と違い待つ人があるわけではないが、単純に徹夜は嫌なものだ。特に、デスクワークでの夜明かしは苦痛である。顔をしかめてから軽く頭を振って、バターとキュウリだけを挟んだシンプルな一切れを咀嚼しながら、雲雀はカレンダーの9の小窓を開けた。その途端、ちかりと眩しく反射して、疲れた目をきゅっと細めた。
光をあてると、にじができます
ふせんをはがすと、立て結びに結わえられた銀のリボンを引っ張って、それを取り出した。スワロフスキーの雪の結晶。窓辺に吊るしておくと、日光を屈折させて小さな虹がいくつもできる。いわゆるサンキャッチャーというやつである。以前沢田が欲しがっていたが、ボンゴレ並盛支部は端から端まで全て地下の施設で、日光は射さない。風紀は表の顔も一応持っているので、地上部にも建物がある。
「……自分が見たいだけだろう、」
唇を尖らせながらも、頭の中では、雲雀が所有する中で朝日が一番綺麗に差し込む部屋を検索し始めていた。
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