12月10日

 いつに無い熱心さで繰り返し報道されている、今年のノーベル平和賞も、ついに授賞式が行なわれる。執務室に届けられた新聞各紙を順に流し見て、最後の一紙をぱさ、と放った。かの国は揺れている。巨大な国土と悠久の歴史の中におおらかに内包していたねじれ、矛盾は、急激な近代化の波にもまれて、白日の下にさらされている。暴かれている。許しはしないと、外部から弾劾されている。

 雲雀は、く、と喉の奥で笑った。沢田綱吉に見られたら、とがめられそうな歪んだ笑みだった。

「金と暴力の匂いがするよ、ねえ?」

 机の上に乗った紙の上から、橙色の星のような小さな干菓子を一粒、指先でつまんで、前歯でこりりと噛んだ。口の中で、しゃりしゃりと音を立てる。

 こないだ 医りょう班の人に
 やくほうし の折り方を
 教えてもらったので
 何か包みたくなりました。
 今日で10日めです
 ひばりさんに抱きつけるまで
 あと20日!

「まさか、薬包紙って漢字で書けないんじゃないだろうね、」

 しかも、折り方は高校で一度習っているはずだが、覚えていないのか。すりガラスのような、半透明の薬包紙に油性マジックで書かれたメッセージを見て、雲雀は半眼になる。包まれていたのは、小さな小さな金平糖、紫色のと橙色のが半々に、合計十粒。

「医療班の人間に会うようなことがあったわけ?」

 病気か、怪我か、どちらにしろ、聞いてないんだけど、と眉間にしわを寄せ、十粒の金平糖をこりこりと食むうち、しかし、さっきまであまりたちの良くない風に、物騒なかたちに歪んでいた雲雀の口元は、いつものへの字に戻っていた。