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12月11日
  
 午後三時、休憩には良い時間である。先日の徹夜から回復すべく午前中は惰眠をむさぼって、それでもいくつか懸案があり、ブランチの後には出勤していた雲雀は、ぐっと伸びをするとカレンダーを取り出した。中に入っているものを確認すると、内線でコーヒーを頼む。少し甘すぎる。
  
 ただいま! 
 無事に帰ってこられました(たぶん) 
 これはおみやげです。なんてね 
 昔から父さんのみやげはいつもこれで 
 オレは意味がわかりませんでした。 
 意味がわかってからは 
 ばっかじゃないのと思ったけど 
 ひばりさんにあげたいと思ったオレは 
 やっぱり父さんの息子なのかも。 
 (イヤだなあ) 
 夕方には空港について 
 むかえの車に乗ったらそのまま仕事です 
 今日くらい休みにしてくれてもいいのに!
  
 入っていたのはイタリア土産の定番、バッチチョコだ。その名の通りと言うべきか、甘ったるいキスチョコである。ボンゴレでは誰かしら、しょっちゅうイタリア本部へと行っているから、常備しているような状態になってしまっている。どこからか一つ貰ってきて、ここへ入れたのだろう。
  
 かさかさと銀紙をむくと、さらに紙にくるまれている。恋だとか愛だとか、そんなことに関する言葉が印刷されていて、奥さんへのお土産に添えるのにぴったりです、と沢田綱吉が草壁に講義しているのを以前聞いた。紙を広げてみる。
  
 Perche' parlare? Tutto l'amore si dice in un bacio. 
 (Why use words when a kiss says it all?)
  
 銀紙をはがさなければ何が書いてあるのかはわからないのだから、彼が意図してこれを入れたわけではないのだろうが。ちらりと時計を見た。今頃は雲の上だろう。
  
「キスもできないところにいるくせに、」
  
 唇を寄せたチョコレートはやはり甘ったるかった。 
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