12月13日
朝早く、大してふくらんでもいない黒いカバンを持った雲雀は、自分の執務室にいた。自室に持ち込むのははばかられてこの部屋に置いておいた、取引材料にするいくつかの研究データ、エンジニアがよってたかってカスタマイズした出張用の風紀特製ノートPCなどを荷物に加える。もうすぐ草壁が迎えに来る。
カレンダーを取り出した。もらって2週間、もともとそんなによくできた作りではない空き箱は、だんだんくたびれてツリーの絵もみすぼらしくなってきている。じっと、光に透かすように斜めに表面を眺めた。雲雀が香港へ滞在する予定の、今日から17日まで、5つの数字が1つの大きな窓に書かれている。ぺりぺりとセロハンテープをはがして、いつもの5倍の大きさの扉を開けた。ごちゃっと、なにか賑やかな色彩が詰め込まれている。
梅仁丹、正露丸、パブロン、バファリン、ピンクのうさぎの絵のついたばんそうこう(残念なことに雲雀はマイメロディを知らなかった)。
「……心配性の母親か何か?」
しかも、薬はそれぞれ5日分、きちんと小分けされている。おそらくは、沢田綱吉が出張の際、周囲に持たされているものなのだろう。面倒になって箱をひっくり返すとがさがさと振った。結び文も律儀に5つ、ぽとりぽとりと落ちてくる。13日、と書かれたものを開いてみた。
生水は飲んだらだめですよ!
いってらっしゃい
もう何か言う気にもなれない。机の上を散らかしたまま雲雀が脱力していると、車の用意ができたと呼びに来た草壁が、薬と結び文を目ざとく見つけ、どこに持っていたのか小さなジップロックにそれらをまとめて黒いカバンに入れてしまった。
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