12月16日

 ホテルの、安物だが清潔なリネンに包まれて目を覚ました雲雀は、洗面台で鏡を覗き込んで、頬に貼ったピンクのうさぎのついたばんそうこうをぺりりとはがした。昨夜の騒動でいつの間にか切っていたらしい。就寝前にシャワーを浴びる時にやけに染みるものだから応急処置として貼ってはいたが、さすがにこんなものを顔につけたまま表に出られない。

 今日は、正規の手段では日本へ持ち帰ることのできないものを運び屋に託して、それからこの地に住む親族に顔を見せなければならない。今回の日程の中で最も忌々しい「仕事」である。考えながらひげを剃っていたら、危うく反対側の頬にも傷を作るところだった。

 ルームサービスで頼んだ朝食の粥をすすりながら、結び文を開いた。

 もし時間があったら
 タイガーバーム買ってきてください
 こないだザンザスが来たときに
 トラの絵を気に入って
 持ってっちゃいました
(ちょっとかわいかった!)

「……並盛のドラッグストアで普通に売ってるだろう」

 そして雲雀はタイガーバームは苦手だ。沢田綱吉が肩こり筋肉痛に塗っていると、問答無用で大浴場に沈めたくなる。彼の匂いがしなくなるから。

 雲雀は今日の結び文を見なかったことにして結び直し、カバンのポケットへ入れ、代わりに鎮痛剤をスーツの胸ポケットへ落とした。親戚との久々の面会と会食のことを考えると、頭が痛かった。