12月18日

 昼くらいまで布団に埋もれていたかったのはやまやまだが、雲雀が今年中に片付けておかねばならないことは、数え上げれば千も万もありそうだった。旅の荷物の中から着なかったYシャツを出して、しばらくクリーニングにも出していないよれたジャケットを羽織り、ネクタイだけは子供の頃からの習いできゅっと詰めて結び目を作る。ねむいのを隠そうともせず出勤すれば濃い目のお茶が出されたが、土曜日で草壁哲矢は休みとなれば、誰が淹れたのだか、玉露のはずが渋みが強く、不味いかわりに目は覚めた。

 書類の溜まっているデスクを見てため息をつく。昨夜、腹心からは緊急度の高い順に並べてあると説明を受けている。一度取り上げて、ぱらぱらとめくってみて、それからもう一度デスクに戻した。引き出しを開けて、カレンダーを取り出す。18の小窓に指を掛ける。中に入っていたのは、紙切れが2枚。

 伊藤せいかほ で
 おもしろいおまんじゅうを
 みつけたので
 ひばりさんの名前で予約しました
 最近は和菓子やさんもこんなこと
 やってるんですね

 伊藤製菓舗というのは昔から並盛商店街にある菓子屋である。和菓子がメインだが、二代目が作る洋菓子も置いている。親子で技を競い合っているのか、年月を重ねるごとに評判は高くなっているようだ。結び文のほかに入っていた紙は「クリスマス期間限定 高級生菓子セット『きよしこの夜』引換券 引き換え期間:12/18〜12/25」と印刷されている。

「クリスマス和菓子?」

 最近はすっかり白髪になった、伊藤製菓舗の頑固そうな大将を思い浮かべる。けったいな響きだが、奇をてらっただけのものではないだろう。もしそうだとしたら沢田綱吉もわざわざ雲雀の名前で予約したりはしないはずだ。ふむ、とあごに手をやって考える。書類が積みあがったデスクを見る。目の前の紙片に書かれた引き換え期間と、頭の中のスケジュール帳を照らし合わせる。

「………………、」

 まあまずは仕事だ、と雲雀は先ほどまでの気だるさが嘘のように、デスクに向かって大量の書類を捌き始めた。