12月25日

 少し端がよれた書類を手に雲雀は渋面を作っている。重要書類が床に散らばっていたのだ。と言っても、部下が粗相をしたというのではなく、空調で飛んでしまったのである。草壁ならばその辺りはぬかり無く、書類を置いていく時には、例えば個包装の菓子であるとか、雲雀が机の上に置きっぱなしにした万年筆であるとか、そういったものを重しにするのだが、今日は土曜日で彼が休日となれば、そこまで気の回るような若いのはいないのであった。

 しかしいつまでも睨んでいてもしかたがない。近いうちに文鎮でも用意させようと考えながら、気分を変えようと、カレンダーの入っている引き出しを開けた。

 「25」の数字は、へたくそなツリーの絵の頂上の星の部分に書かれていて、扉の部分は今までと比べるとずいぶん大きかった。これまで雲雀には予想もつかない贈り物が数々飛び出してきたが、何となく今日は、ここに入っているものが何なのかわかる気がした。セロハンテープを少しずつはがしてゆく。

 オレはべつに
 キリスト教徒じゃないし
 星に導きを求めてるわけじゃないんです
 けど リボーンやひばりさんや
 今までにオレを導いてくれた
 色んな人のこと
 この星みたいだなあ
 って思うことがあるんです

 雲雀の想像通り、そこに入っていたのはクリスマスツリーの頂上を飾る星のオーナメントだった。ツリーの星は、東方の三賢者をキリストの下へ導いたベツレヘムの星だとされている。よく見かけるのはプラスチック製のてかてかしたものだが、これはマットな金の塗装がほどこされた立体的な木工細工で、素朴だが丁寧な作りが美しい。

 ふと思いついて、結わえられていた細いリボンを外すと、星をデスクの上に転がしてみた。重量のある木製のオーナメントは空調の風からしっかりと書類を守っている。ぴかぴかした派手さはないが、逆にこのたたずまいならば年中デスクに放っておいたところでさしたる違和感はないだろう。それに、これがベツレヘムの星と言うなら、常に目に付くところに置いておくべきだという気がした。雲雀にとって導きの星はいつも沢田綱吉だった。