夢の中で、オレは、黒曜中の生徒でした。

 なんでか生徒会に入っていて、生徒会長は骸でした。ふふ、骸が生徒会長って、すごく向いているような、全然向いていないような、不思議な感じですね。オレは、骸を尊敬していると言うより、恐いと思っていて、下っ端みたいに良く働きました。……もちろん、失敗ばかりしてましたけど。

 昔、並中の応接室で、雲雀さんを手伝ってしたこととそんなに変わらないことをしてたんですけど――まあ、オレは、ほんとの生徒会がどんな仕事をするのかなんて知らないですから、知らないことは夢に出てきようがないですし、――雲雀さんを手伝ってた時はただ、役に立ちたいと思ってやってたのに、上に立つ人間が骸だったら、夢の中なのに、やらされてる感いっぱいだったのが、こうして考えてみると自分でも可笑しいですね。

 さっき、尊敬していると言うより恐いから、と言いましたけど、オレは、骸に言い寄られていました。断ってはいましたが、骸はそれを人前でも隠さなかったし、生徒会長で誰もが知っていましたから、校内ではもうすっかり、オレたちが付き合っている、ということになってました。……やだな、そんな恐い顔しないでくださいよ。夢の中の話です。オレは、夢の中でもやっぱりダメツナでしたから、骸が恐いと思っていて、でも、嫌い、というわけでもなかったですから、強く反論も出来なくて、噂に流されるままだったんです。

 で、生徒会で、オレは書類仕事も金勘定もミスばっかりでしたから、よく使いっ走りみたいなことをしてました。居残って仕事してるみんなのために、飲み物や食べ物を買いに行ったり、他校へ書類を届けに行ったり。夢の中でくらい、有能だっていいのにね。あ、でも、有能なオレだったら、雲雀さんのところで働いてる夢の時の方がいいな。そしたら雲雀さん、いっぱい褒めてくれるでしょう?

 ある日、骸が、並中に書類を持っていく、て言うんです。夢の中でも、骸と雲雀さんは仲が悪かったですから、オレは慌てました。ささいなことでも、殺し合いに発展しかねない。そのくらいなら、オレが行こうと思ったんです。オレ行ってきます!って、封筒をひったくるみたいにして、走って出かけました。慌てすぎて、下駄箱の前で転んで、痛いと思ったんですよ。夢なのにね。

 並中に着くと、草壁さんが門の前に立っていて……ほんとは、雲雀さんの補佐の草壁さんが、門の前に立ってたことなんてほとんどなかったですよね?……けど夢だから都合よくそうなってて、オレは黒曜の制服着てますから当然、捕まって、必死で説明すると、応接室に連れて行かれました。

 ああ、こうやって、口に出して人に聞かせて喋ると、夢なんて、本当に支離滅裂で、恥ずかしいなあ、と思うんですけど。

 雲雀さん、オレたちが、初めてした時のこと……付き合い始めた時のこと、覚えてますか?……あ、びくっとしましたね、まさか、覚えてないんですか!?……なーんてね。もうあの時のことは、ていうかそもそも最初から、怒ってないって、言ってるのに。そんなにびくびくしないでくださいよ。

 全くあの時と同じでした。ただ、オレが黒曜の制服を着てるってだけで。